
不動産屋の友人が
私のために紹介してくれた部屋は
築浅1DKのこぎれいな物件‥手頃な家賃‥
とりあえずの一人暮らしには
申し分のない部屋ではあったが
ひとつ問題があった
半年くらいまえに、隣の個人病院が
増築をし
二階の真ん中の位置にあるその部屋は
朝夕のわずかな時間以外は
ほとんど陽が差さないのである‥
でもなぜか私は、その部屋が気に入った…
なんだか
今の自分に用意された部屋のような気がして
ふたつ返事でOKをしたどころか
感謝の念までわくほどだった…
その頃の私には
世間では当たり前の日常さえ
見たくもなかったし、触れたくもなかった‥
できるだけ隔絶した世界…
たとえそれが地底の物件だとしても
喜んでそこに身を置いたであろう
そのアパートでは
昼となく夜となく、ただ横になっていた‥
まだ私に生きなければいけない
意味があるのなら
ただ夢の中に身をおくことが
生きていく唯一の方法としか思えなかった‥
心をどこかに置き去りにしたまま
ただクラゲのように浮遊してるカンジだった…
そんな私にも唯一、現実を
思い出させてくれる存在がいた‥
学生時代の友人のM恵であった‥
会社帰りには、二日とあけずして
訪ねてきてくれ、夕飯などを一緒に作ったりした‥
同じく一人暮らしだった彼女は
時には、泊まっていってくれたことも一度や二度ではない‥
週末などは
街に一緒に買物に行ったりしたが
幸せそうなカップルや家族連れの
賑わいの中や
横断歩道を渡る途中でさえ
突然足がとまり、
ホントに一歩も前に進めなくなる私を
ひきづるようにして連れて行き
安全なところに座らせてくれた…
そんな状態でも
まだ、私の心は泣くことを思い出せなかった…
現実はまだ私には重荷であった…
〜つづく〜
聖花物語〜陽のあたらない部屋〜 | 聖花(せいか)先生|電話占いカリス