うちの最寄り駅にひとり、ホームレスのおじさんが住んでいました。
常に駅の軒下にいて、そこが彼の住処でした。
彼は沢山のダンボールをよく荷台に乗せて引いていました。
そしてその横には必ず小さい白い犬が横をちょこちょこと歩いていました。
その存在はあまりにもひっそりと静かで、また誰も振り返ることも無く、駅の背景に溶け込んでいるように見えました。
ひとつとても不思議なことがありました。
その人は、ホームレス独特のニオイが無いのです。
匂いに敏感な私がすぐ側を通ってもいつも一切無臭でした。
もちろんワンちゃんも。
行き交う人々も彼等のことを気にする素振りは全くありません。
見えてるのかな?と思うほどに。
いつしか私はそのホームレスさんが、この駅前で無事に暮らしてくれることを願うようになりました。
家族と共に、あの人ずっとここにいるといいね〜などと話しておりました。
現にその方はずっとそこを棲家としていました。
その平和で恙ない姿を見ては、儚くも見えるその光景に少しの安堵を覚えていたのです。
それから程なく、駅前に時間置きの駐輪場が作られる工事が始まり、俄かに駅前が騒音と工事用具で喧しくなりました。
私はこの喧騒が彼の居心地を悪くしないか、それが気掛かりでした。
そして自転車を置くその機械が、彼の居場所を奪ってしまわないようにひそかに願ってもいました。
しかし願いに反してその頃から彼を駅前に見つけることはなくなってしまいました。
工事さえ終わったらきっと戻って来ると小さな期待をしていましたが、ついにあのホームレスさんはあれ以来姿を消してしまいました。
あの方はどこへ行ってしまったのでしょう。
せめて今迄よりも暮らしやすい場所を見つけたと思いたい私です。
もしかしたら私が願ったばかりに、彼の現実を動かしてしまった、ここに居て欲しいと思った時点でもうそこにいるのは長くないと予見していたのではと思っていました。
そしてある時、ふと何の脈絡もなく私に降って来た天からの?伝言。
あのホームレスさんはとある神様であったよと。
連れていたワンちゃんは天使さん。
と、唐突に彼の正体がわかったのです。
しかもあのような形で姿を現すのは、相当格の高い神様とのこと。
神様はいつも私達の想像するような姿で登場するとは限らないのです。
油断せず、どんな人も大切に接しなさいよと言われた気がしました。
そういえば昔、そんな童話も読んだ気がします。
幸福、とかいう。
図らずもわかったホームレスさんの正体。
彼はどこへ行ったのか、今は知る由もありませんが、つい無事を祈ってしまう自分がいるのです。
これから寒くなっていきます。
どうかどこか心地のよい場所でワンちゃんとともに暖をとることが出来ていますようにーー。
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