
春の海は、打ち寄せる波が同じリズムを繰り返すのどかな情景です。与謝蕪村は「春の海ひもねすのたりのたりかな」と、のどかさのなかに、かすかな物憂さをよみました。
私も春の海を訪ねてみました。そこで浦島太郎の物語を思い出して詠んだ句です。
浦島の呆けて立てり春の海 譜慈
竜宮城で幸せな時間を過ごした浦島さんが故郷の浜に帰ってみると、700年の時が経っていました。家族や知人はすでになく、住処もなくなっていました。途方にくれた浦島さんは思わず、「開けてはいけない」と乙姫様に言われていたのに、玉手箱を開けてしまうのです。すると玉手箱に閉じ込められていた竜宮城での時間が煙となってたなびいたと思うと、浦島さんは白髪のお爺さん。
そんな浦島さんの目の前には海です。時間は人や建物を変化させ、葬っていましたが、故郷の海だけは変わらず、昔のままにあったのです。さざ波が寄せては返し、寄せては返し、悠久の時を刻む浜辺です。
「ああ、懐かしい波の歌よ…!」
呆然と立ちつくす浦島さん、今はもう全ては忘却のかなたに……。
そんな想像をした春の午後でした。
あと二つ、「春ゆく」「春行」の俳句を。
散り急ぐ花のうてなに春はゆく
春行やいよいよ花の降り止まず 譜慈
美しい桜の時期は足早に去っていきますね…。もう少し散らずにいてほしいと思うのに、月に叢雲花に風。惜しまれながら春は過ぎ去っていきます。
名残り惜しくも春は過ぎていきますね… | 譜慈(ふじ)先生|電話占いカリス