続魂みがきの人たち(8)
HY社長の5回の結婚
初めての売り上げは、保険会社時代の先輩TYさんが買ってくれました。
しかも、2台。本当に助かりました。
売り上げ報告をして会社に行くとHY社長が喜んでくれて、事務長に「おいT恵、すぐに利益計算してKに取り分を渡してやってくれ、
営業で、金を使っているから早い方がいいだろう」これにはびっくりすると同時に本当にありがたいと思いました。
普通は締めと支払いという感じで後払いになるものですが、この辺が長い間苦労してきた社長の優しさだと思います。
「よし！今夜はKの初売りを祝ってツボ八で乾杯しよう」と、どこまでもツボ八の社長です。
ツボ八で飲み始めると、社長は奥さんのT恵事務長の話をし始めました。
「俺は5回結婚したんだ。初めての結婚の時のことは、今でも相手に申し訳ないと思っているよ。
今考えると、結婚詐欺みたいなもんだよな。
俺も若かったこともあるけど、あまりにも金がなくて結婚費用も全部彼女が用意した。
借金も彼女に沢山していたので、結婚したら返さなくてもいいかなと思って結婚したってわけさ。
でも、やっぱりあんまり好きになれなくて、そっと家を出て別の街で違う仕事について二度と帰らなかった。
ひでえ奴だよなあ。自分でもそう思うよ。
本州にいる時に、その後2回結婚したんだけど、仕事に失敗したりで、結局それらも長く続かなかったよ。
それから、北海道に渡って始めたのが漬物宅配ビジネスさ。
これが当たってなあ。ロケットのように急上昇して、その頃4回目の結婚をしたんだ。
俺にはもったいないくらい綺麗で物静かな女だった。
俺の二人の娘はその4回目の女房の子だ。
そんでその頃、事務員で入社したのがT恵なんだ。
田舎から出てきた芋姉ちゃんだけど、仕事はできるし俺の言うことに、はい！はい！ってめんこくて、だんだんうちに連れて帰るようなって。
そのうち毎日女房と川の字になって寝るようになっていった。
そんなのがしばらく続いた頃、女房は何も言わずにある日黙っていなくなった。
それから二度と帰ってこなかったよ」
「そりゃそうでしょうよ」
「ま、そうだ。でも、その後T恵は二人の子供を自分の子でもないのにちゃんと育ててくれたんだよ。
それでT恵と5回目の結婚をしたってわけさ」っていう話を聞けば聞くほど、やっぱりこの人は普通の人ではないという気持ちが強くなりました。
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