続魂みがきの人たち(4)
HY社長との出会い
社長の話は続きます。
「俺を一番分かってくれて、一番愛してくれたお袋は死んでしまった。親父は酒飲んで俺を殴るし、もうこの家には居たくないと思うようになったんで家出したんだ。
15歳の夏だ。あの頃はまだ青函トンネルがなかったんで、連絡船に乗って海を渡ったんだけど、あの時のことは忘れないよ。
15歳の少年が、まだ子供だよ。たった一人で海を越えて本州に向う。
そん時どんな気持ちだったのかなって思うと今でも、自分のことなんだけど涙が出て来るんだよな。
今でもあのボーーって汽笛の音が耳に残っているんだよ」
「そんな15歳でひとりで本州に行って、どうやって生活したんですか？」
「歳をごまかしていろんな仕事したさ、庭師見習い、土方、バーテン、クラブの前座歌手、食べるために何でもした」
「でもこうやって今、社長になってるんだから凄いですよね」
「ここまで来る間にも上がったり下がったりがあったんだ。北海道に帰って来てから漬け物の訪問販売っていうのやってね、
販売員何人も入れて、テレビコマーシャルかけてロケットのように急成長したんだけど、社員の造反でジェット機のように下降して、またやり直してって感じかな。
でも、こうやってあんたと話ししてたら、なんか一緒に仕事したくなって来たなあ。
よし！あんたを雇おう。ただし、払えるのは、それでも月12万というところかな。
だって何処の馬の骨か分からん中年男だぞ。相場そんなもんだぞ」
と、やっと社長は私を雇う気になってくれたのですが、倒産後バラバラになった家族を元の形にしようと考えていた私には、12万では到底足りません。
そこでこう切り出しました。
「社長ありがとうございます！では、これではどうでしょう。完全歩合制ということで、例の活性水素水の機械を売らせて下さい。売れなければ1円もいりません」
「それで本当にいいのか？それなら会社にとってもリスクが無いので助かる。
俺は今回のことで利益はそんなにいらないので、あんたの取り分は大きくしてあげよう。
では、そういうことで乾杯しよう！よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします！ありがとうございます」そんなわけで、これまた強烈な個性のHY社長とのお付き合いが始まりました。
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