誉清とオカマ(4)
高級住宅街で生命保険の飛び込み営業をして、一軒の豪華な御宅にお邪魔して新発売の保険の説明をすることになりました。
こちらが営業で伺っているのに立派なお茶菓子をいただき、さらに抹茶の本格的なお茶を立てて下さいました。
「ささ、どうぞ。作法なんかはどうでもよろしいから、ズズッと召し上がれ」と言って勧めて下さいながら「どんな保険？貯蓄性は高いの？」
「はい、今回の保険はまさに貯蓄型です」
「それじゃ1本付き合いますよ。毎月とか毎年とか面倒だから先に全部払うのってないの？」
「前期前納ですね。非常にお得です」
「お付き合いだから、300万くらいでもいい？そのぐらいならきっと奥にあるでしょう。持っていきます？」
「いえ、いえそれは出来ません。後日に正式な領収書をお持ち致しますのでその時に、今日は申込書だけいただけ頂いてまいります」ということでお礼を言って御宅を失礼しました。
営業所に帰ってから茶道に詳しい女性に、今日お客さんにお茶を立ててもらってご馳走になったことを話しました。
するとその女性は、「それってもしかしてA先生じゃない？」
確かに同じ名前です。
「その人大学教授で、茶道会の役員だけど有名なオカマよ。
三大オカマの一人って言われてるわ」
「三大オカマ」聞いたことのあるフレーズです。
その数日後、ドキドキしながら領収書を持ってお邪魔しましたが、行ってみるとA先生はお留守で、息子さんが保険料を渡して下さいました。
この時は、自分のオカマモテる体質に感謝しました。
そんな私ですが、たった一度だけ過ちを犯しかけた事があります。
東京の劇団の頃です。
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