誉清とオカマ(3)
京都の大学を中退して東京の青年座へ行った後、北海道へ帰って私は生命保険会社に入社しました。
劇団を立ち上げる資金作りのためです。
最初の6年間、外勤を経験したのですが。
その外勤の時の話です。
新規のお客様を開拓するべく、私は他の保険外交員があまり行きたがらない場所に飛び込み営業をかけるようにしていました。
その中のひとつに高級住宅街というのがありました。
保険の営業って面白いもので、大体みんな行きやすい所に集中しているのです。
デパートや役所の昼休みなどがそうです。
人は自分と生活水準が同じかその前後の人とは話し易いのです。
ですから当然競争率も高い。
その点、大金持ちの高級住宅街に飛び込みする人はほとんどいないので珍しがって話を聞いてくれます。
A先生のお宅もそんな御宅の一軒でした。
街を見下ろすような高級住宅街の一画で、広い敷地の平屋の家でした。
石造りの門があり、家まで10メートルくらいの緩やかなカーブのあるアプローチで繋がっていて。
左右に洋風の庭が配置されています。
チャイムを鳴らすと返事があり、ドアを開けると、和服姿の50代の男性が立っていました。
「○○生命ですが、新発売の保険についてのキャンペーンでお邪魔しております」
「○○生命！君、○○生命の人？本当、ちょうど良かった！聞きたい事があって、証券持ってくるからちょっと上がって応接間で待っていて」
男性は保険証券を持って戻って来くると「あのね、これ満期がいつなのかぜんぜん解んないんだけど教えて貰える？」
「あ、これは、終身保険と言いまして解約時が満期ということです」
「あ、そう。本当。助かった。で、君は何をしに来たんだっけ。なんか新しい保険の話なの？ちょっと詳しく聞かせて。
今ね、お茶を立てて差し上げるから、その間、このお菓子でも召し上がってて。
それね、私、毎年京都の老舗に作らせてて、私のオリジナルなの」
なんか、サービスが良すぎて夢のようでした。
電話占いカリス 口コミで当たると評判の占い師を厳選 初回最大10分無料