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魂磨きの人たち(9)

銀座のパワハラ社長T社長
オカマのママの店でしばらく飲んだ後、今度は「歌いたくなって来たな、カラオケがある店に行くか」と言って別のビルにあるバーに向かい、
また「よっ！」と言って入って行きました。
ここは音楽好きのマスターの店で、小さなステージに楽器が置いてありました。
社長がマスターに「どうだ最近は儲かっているか？」と言うとマスターは「ウチは社長が来てくださらないとサッパリです。」と言いながら飲み物をセットし始めました。
社長は水割りを少し飲むと、マイクを持って歌い出しました。〜♩「川は流れて どこどこゆくの〜♩」
喜納昌吉の「花」です。
「泣なさい〜笑なさい〜いつの日か〜いつの日か〜花を咲かそうよ〜〜♩」
「泣なさい〜笑なさい〜いつの日か〜いつの日か〜花を咲かそうよ〜〜♩」
「いつの日か〜いつの日か〜花を咲かそうよ〜〜♩」
社長は私の方に手を差し伸べて私の目を見て歌うのです。
彼なりのやり方で私にエールを送っているのが分かります。
こんな人だけど、憎めないところがある人だと思いました。
この後は、マスターの歌がいつもワンパターンでつまらないと言って「お前は新しい歌を知らないのか！」と怒り始め、
次には私に「お前も苦労してるな。可哀想だな」と言ってオイオイ泣き始め、
そのうち泣き疲れてまた寝てしまいました。
2時間近く眠っていて社長が起きたのは午前4時頃です。
「ん？ここは何処だ。なんでお前がいるんだ？」と言うので説明しようとすると、
「あっ！思い出した、5000万見せろって俺が言って呼んだのか。
そうか、そうか悪かった。
じゃ、誉清ちゃん俺は帰るぞ」と言って帰って行きました。
タクシーに乗った私はこんな時間からホテルに宿泊する気にもなれなかったので、
運転手さんに「このまま、羽田に向かって下さい」と言って、早朝の便で北海道に戻りました。
後から振り返るとここら辺が地獄の2丁目でした。