あれから 新しい学校にも慣れ
友だちもできた
わたしは前の学校の友人と文通をしていた
話題の中心はNくんの動向だった
相変わらずのポーカーフェイスは
健在のようだった
この友人はMちゃん
立派なことにこのつきあいは
大人になっても続いた
そしてラッキーだったのは
彼女が非常に前向きで積極的で
更に世話好きだったこと
そのため彼女はNくんにわたしの存在を
時々インプットしてくれた
彼の態度は当然聞き流しだったことは
言われなくても
承知していた
にもかかわらず彼女は彼から住所を聞きだし
文通の許可をとってくれた
彼女の行動力には感心と感謝でいっぱいだ
彼が不用心でお気楽な性格なことも幸いした
住所を手に入れたものの
どんな文章を書いたらいいのかも
思い浮かばず
しばらく放置して
日々は過ぎた
ある時 Mちゃんは電話をかけてきた
どうやらNくんに彼女ができたらしい
Tちゃんという小柄な可愛い
お人形のような人だ
わたしは幼稚園の時
Tちゃんと大の仲良しで
おとなしくて優しいから好きだった
なんとなく彼の趣味の良さに安心した
どうやらTちゃんから告白したらしい
なんか納得
気が合うだけあって 好みも同じだったかと
あっさり許すことにした
別にそんな権利ないのに
勝手に許可だすわたしも なんだかね
そこから半年くらい経過した頃
再び まめなMちゃんは情報提供してくれた
Tちゃんと別れたらしいって
今がチャンスだから行動おこせば
とアドバイス
でも 傷心してるかもだし
どんな文章書くのかも？だしねー
相変わらずぐずぐずして日々は過ぎていく
そして思いついたのは年賀状
ありきたりの中に 近況報告
連絡先の提供
やったー
年明け 年賀状の返信のその他に混ざり
来たよ来たよ
初日の出の絵入りで 文字数少な目
ことしもよろしく
ことしも って
昨年かかわってないけど
でも よろしくって ことは 前向き
続く意味だし
幸運な感じ
などと 再びの 定型文でも
ときめく わたし
再びのお守り 決定
そんなこんなで
Mちゃんに笑われつつ
決定的なその日がくることになる
ある夕方のこと
ぼんやりしていると
電話が鳴った
Ⅰさんおねがいします
はい わたしですけど
Nだけど わかる？
えー うそうそ ほんと？
はい え ？
などなど と
しどろもどろの会話から
なぜか 自然発生したことは
来週の日曜日
K市の城址公園で再会するという
約束とりつけ
ほんと？
信じられない急展開に
努力は報われる
という 格言の証明
年賀状に書いた電話番号の存在感
こまめな作戦効果
その日
成長して 体型も髪型も 変化した彼がいた
なんか別人と並んで歩いている感じだった
お互いに無口で不器用な二人では
無言の空気感がやるせなく
発展する予感はしなかった
にもかかわらず
その後数年わたしたちは
ぎこちなく交流していた
電話での近況報告
公園でのブランコデート
あの日 教室のサボテンが刺さりそうで
ドキドキした頬を
懐かしく想いながら
触れた 指先と・・・
麗しき初めての恋愛は
長い時間をかけて
成就した。
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