カーキチは 羽根が破けている
カーキチは外に出ると
どこからともなくやってきて 見ている
そして こちらがそこをいなくなると
さりげなく降りてきてひと通り
同じルートを歩き回る
何のため？
カーキチはよく遊んでいる
カラスは遊ぶと言うけれど本当の話
カーキチは物置のトタン屋根で
よく滑り台をしている
滑ってはトコトコまた上がり
また屋根の上から滑ってる
単独でやってる
時には みかんの木の名札を引っ張ったり
回したりして遊んでる
餌を見つけると運んで行って埋めている
ある時などは
まだなっているトウモロコシの
皮を剥いで中の実をつついて
食べていたりもする
すごく器用だ
本当に一日中楽しそう
時々 わたしはキャベツの芯を
土に埋める
埋めておけばそれが土に着いて
そこから芽が出るはずだから。
でもどういうわけか
埋めてから次に見に行くと
必ずそれがほっぽり出されている
またそれを元に戻す
また次に行くと掘り出されている
また埋める
またほじくりかえされる
悔しいからまた埋める
これがエンドレスに続く
犯人はカーキチ
本当によく探す
これって愛情表現なの？
それとも 意地悪？
たいていは負ける
嫌になっちゃう
根負け
カーキチのほうが根性がある
というか面白がってる
キャベツは干からびてる
家に帰ってくると
どこからともなくやってきて見ているが
絶対に目を合わせない
いつも横を向いている
他のカラスがやってくると
大騒ぎをして追っ払う
ただやつにも
仲間らしきものはいる
ただ掟があるようで
優先順位は決まっている
ある時 カーキチと ネコ吉が
睨み合っていた
陣地争いなのか餌争いなのか？
カーキチは仲間と合わせて三羽
ネコ吉は一匹
カーキチたちはギャーギャー言ってる
ネコ吉は尻尾をもたげて 戦闘態勢
何とそれをスズメ二羽が
リンゴの木にとまって 観戦している
スズメ達は楽しそうに会話をしている
更にそれをわたしは後ろで見てる
もしかしてそれをまた誰かが後ろで
見てたりして？
その戦闘も多分彼らの遊び
ギャーギャー言ってる割には
うごきはない 固まってる
雀たちも凝視。
カーキチの勝ち ネコ吉がうずくまった。
仲が悪いようだけど実は仲がいい
雀たちは残念そうに飛び立った
また ある時などは
カーキチがなんと
自分の埋めた 食べ物を
ネコ吉にあげているのを目撃した
不思議なことに彼らは連帯感がある
カーキチは ネコ吉にいつも何かしらを
残しているように見える
先に見つけるのはカーキチだから。
いつも同じ縄張りで行動してるということは
どこか 共感や同情が 生まれるんだろう
愛情とかも？
それにしても
カラスや雀や猫はいいよね
市民権があるから
普通にうろうろしてても
全然違和感がない
もしこれが孔雀とか鷲とか
こぶたとか アライグマとか だったら
かなり騒ぎになりそうな気がする
日常ってすごい。
ねぇ つまり
愛とか 暮らしとか
それってみんな
脳の習慣？脳の錯覚？
当たり前になったら
何とも思わないってこと？
結局 生きるって
そういうこと？
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