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続魂みがきの人たち(15)

R美の生い立ち。
部屋に入ると、彼女はビールとグラスを用意して、小さな声で「乾杯」と言って「私、社長とこんな風に会うの願ってたの。本当よ、初めて会った時からそう思ってた。
だから今日は私の夢が叶ったお祝い。」と言い、私はR美がそんなことを考えていたのかと少し戸惑いながらもその言葉が嬉しくて、彼女をかわいいと思いました。
その時以来、数回そんな風に彼女と会いました。
でもその後間も無く、「もう、会えないと思う」という電話があって忽然と私の周りに姿を見せなくなりました。
後に噂で、既婚のヤクザの男と駆け落ちするように名古屋へ行ったという話を聞きました。
R美は私と会っていた時に、自分の子供の頃から今までのことを話すことがありました。
「あのね、私の本当のお父ちゃんは大手の建設会社で働いていた人だったんだって。
でも、私が1才の時に建築現場の事故で死んじゃった。
私は小さかったから憶えてないけど、上からコンクリートパネルが落ちて来て下敷きになって死んだんだって、即死だったらしいんだ。
私のお父ちゃんとお母ちゃんは本当に仲が良かったみたいで。
お父ちゃん、お母ちゃんをすごく愛していて、だからお母ちゃんはあまりのショックでノイローゼになって私を育てることが出来なくなったのよ。
それで、私はおばあちゃんに育てられたんだ。
いつもおばあちゃんがやっていた小料理屋の奥の座布団の上で遊んだり寝てたりしてたのを憶えてるわ。
お母ちゃんは建設会社から一生の生活を補償する年金がで出ていて、もうそれで働く必要が無くって、毎日昼間からお酒飲んでるような生活だった。
そのあと再婚したんだけど、その二人目のお父ちゃんはヤクザだった。
毎日覚醒剤打っては暴れるような人よ。
私には妹がいるんだけど血は全然繋がってなくて、そのお父ちゃんが連れて来た子供、M子って言うの。
で、ある時にお父ちゃんが、私とM子をデパートに連れて行ってくれたことがあったんだけど、
途中でお父ちゃんが居なくなってM子と私が必死になって捜したらトイレの中で注射器持ってしゃがみ込んでた。
そんな姿、娘達に見られる父親って格好悪いよね。最低だよね…。」
私はR美が無表情にそんな話をするのをじっと聞くしかありませんでした。