魂磨きの人たち(12)
銀座のパワハラ社長T社長
1月31日の午後3時前にT社長の会社に到着しました。
私は紙袋に入った1000万円の札束を渡してお礼を言いましたら。
社長は紙袋の中をちょっと覗くようにして確認すると、机の後ろの棚の上に無造作に放りました。
「来月もこの調子で返しに来いよ」
「社長、実は来月はちょっと難しいかもしれません、、」
「何だと、今から1カ月もあるじゃないか。もしかしてお前は返す気が無いな」
「いえ、とんでもないです。そんなことはありません。
でも、今は仕入れ資金もない状態で」
「そんなことは俺には関係ないんだよ。
甘えてもらっちゃ困るんだ。少しは努力しろ。
ところで、お前今夜は東京にいるのか？」
「はい、今のところ夜は予定入れていません」
「そうか、じゃあ今夜7時に赤坂のすき焼き屋で会おう。
お前の他にもう二人来ることになっている。
一人はお前もよく知っている奴だよ」
その後、ホテルにチェックインしてシャワーを浴びながら、今日も朝まで飲むことになるのだろうかと考えていました。
赤坂のすき焼き屋で社長の名前を伝えると奥の部屋に案内されました。
私以外の三人はすでに席に座っていて、打ち合わせをしているようでした。
そこにいた一人は、確かに私のよく知っている男でした。
Oです。私と社長と同じあの故郷の街の出身です。
彼には兄がいて、兄弟でガソリンスタンドを経営していましたが、3年前に倒産しました。
その後どうしているのかと思っていましたが、今回会ったことで、T社長の取り巻きとして何かの仕事をしているんだと思いました。
同郷なので私とは幼なじみでしたが、何を考えているのかわからないような油断出来ない部分を感じる男でもありました。
そしてこの時初めて会ったもう一人は、この後上場予定として資金を集め始めるITベンチャーのH社長です。
そして、この時の会合がまた私を地獄の3丁目に引きずって行くのでした。
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