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以前、
対面占い鑑定所に勤務していた時の事。

その鑑定所は、雑居ビルの最上階で、
非常階段とトイレの近くの廊下に、
椅子と机を置いただけの鑑定所でした。

人通りが、全くありませんでした。

２名体制で、勤務していました。
毎日、一緒に勤務する先生も変わります。

ある日の事。
相変わらず、お客様の来店はなく、
人通りも、全くありませんでした。
一緒に勤務していた先生と、暇つぶしに、
〇話をする
〇お互いを占いし合う
〇交代で買い物に行く
をしても、時間が経ちません。

朝から勤務して、夕方になっても、
人通りは、ゼロでした。

佑弦（ゆづる）は、段々と眠くなって、
鑑定スペースに座ったまま、
うたた寝をしていました。

すると、何だか、変な声が。。。
「に〜〜ん〜げ〜ん〜、ご〜〜じゅ〜」

佑弦（佑）（なに？この歌声？うなり声？）
と思ったら、横の先生の声でした。

（佑）「先生、何をされているのですか？」

有名な先生（先）「あ〜、詩吟よ、これは。
私、詩吟を歌いながら、
舞踊をする教室に通っていて、
もうすぐ、発表会だから、
練習しようと思って。」

（佑）「詩吟は、知ってますよ。
漢詩の『塞翁が馬』とかを
歌うんですよね。」

（先）「あなた、若いのに、
良く知ってるね。
なら、一つ、吟じようかな。。。」

と、先生の詩吟を聞く事になりました。

（佑）（眠いんだけどなあ。。。）

吟じ終わったら、先生が立ち上がり、
（先）「ちょっと、そこにいるから、
お客さんが来たら、呼んで。
ちょっと、行ってくる！」

急に、どこかへ、出て行かれました。

（佑）（そこまでって、どこだろう？
向こうは、行き止まりで、
トイレと非常階段しかないけど。
お客さんが来たら、トイレに呼びに行くの？
さすがに、それは、・・・）

そう思いつつ、
また、座って、ウトウトと寝ていたら、

静かな、雑居ビルの廊下に
大きく、数多い足音がしてきました。

警備の方が、何人も走って来られました。

（佑）（なんだろう？事件？）

と思っていたら、鑑定所の前を通り過ぎて、
非常階段へ走って行かれました。

少し経ってから、
佑弦（ゆづる）も気になって、
後を付いて行ったら、

隣の先生が、非常階段の入り口前で、
警備の方に怒られていました。

どうやら、先生は、
非常階段の踊り場で、
詩吟をしながら、
舞踊を踊っておられたようです。

防犯カメラに、映っていて、
警備の方が、様子を見に来たとの事。

きっと、防犯カメラには、
ハデハデの占い衣装を着た、オバサンが、
立ち入り禁止の非常階段の踊り場で、
うなり声を上げながら、
踊っているのを見て、
不審者に思ったのでしょう。

以来、その占い鑑定所では、
離席は、トイレと食事以外禁止。
待機中も、話をしない。
などの決まりごとが出来ました。

その先生は、と言うと、
詩吟と舞踊の教室も辞められて、
待機中は、占いの勉強だけを
されるようになったと、聞いています。

この時の経験が、
記憶に残っているせいか、
佑弦（ゆづる）は、
カリス占い所での待機時間でも、
黙って、座っている事が多いです。